2000 11/3
私は本当にとんでもないアホでとんでもない小学生だったので、当時のネタは、まじで書けないようなモノがたくさんたくさんある。
そこでなかでも割とソフトなネタのみを厳選して、昨日から引き続きまして、ミレニアムスペシャルとして数日間お送りしようと思う。
今日は第2弾、「近所のマンションのオートロック解読事件」をお届けいたします。

 私は小学生の頃、塀に登るのが大好きで、猿のように身軽によく自分ちの塀に登っていた。
しかも小学校2年生からメガネをかけていたのでメガネザル状態。
たまに家の屋根にも降り立っていたが、これは祖母にとにかくめちゃくちゃ怒られたのでいつしか辞めた。

 さて、塀なら何処でもと言うワケでは無く、近所駐車場の周りの塀が私のロッキングエリアであった。
登って塀の上をとことこ歩いてつたって行くとまるでサーカスの団員になったようで楽しいし、
なんとなく高い所から見下ろすのが楽しい。まさに、「煙となんとかは高い所がスキ」、というアレであろう。
しょっちゅう怒られたが、私はメゲずにいつでも塀に登っていた。

 そんなある日、いつものように私が塀に登っていると、
駐車場の隣のマンションの人が、マンションのオートロックの暗証番号をうちこんで、中へ入っていくのが見えた。
私は何とはなくそれを眺めていたが、ふと、その暗証番号を解読してしまったのだ。
好奇心から、私はその番号を打ち込んでみた。
すると、「ピー」という音とともに、扉のカギがカチャッと音をたてた。扉を押してみると開いた。
うわー、すごいー!と感動した私は、マンションの中への侵入を試みた。
っていうかおい、家宅侵入罪で罰せられてもおかしくないぞ。

 関係者以外立ち入り禁止、と書いてある一番地下の機械室にも忍び込んでみた。
今思えばセキュリティとかガスとか空調とか、まあそういう機械なんだろうけど、
とにかく壁に機械があって、緑とか赤のランプがついてて、それが時々「ピピッ」と言っていた。
私はまるで宇宙人の基地かという位怖くなって、
「ここ、怖いんだよ」と友達を連れて一緒に見に行ったのだから末恐ろしい。
当時はまだそんなになかった、入り口ドアに窓のついたエレベーターにも乗ってみた。階と階の間なんか見えちゃってちょっと怖かった。

 そして私は、マンションのゴミ置き場からも同じ暗証番号で中へ入れるということを知った。
以後私は、あまりに目立つ正面玄関からでなく、ゴミ置き場から幾度となく侵入を試みたのであった。
侵入中マンションの住民と出くわしても、「こんにちわ」と笑顔で堂々と挨拶をしていたのだから恐ろしい。
中で何をするでもない、高いところに登ってみたり(ひとんちでもやっぱり高い所に登る)階段を上ったり下ったりしてみたり。
何しろ本当にただの脳ミソの足りないガキなので泥棒する気もプライバシーを侵害する気も何も更々無いのである。

 そんなこんなで数ヶ月だったある日のこと。
マンションに住む同じ学年の子のお母さんに呼び止められた。
「この間、なんであの子は中に入れるんだろうって、マンションの住民会議で問題になったの。
このままだと、私達全員ここを引っ越すか、暗証番号を変えなくちゃいけなくなるの。だから、入ってくるのやめてくれる?」


 おそらく、相当問題になっていたのであろう。
そして、住民の皆様はもうめちゃくちゃ迷惑していたのであろう。
私はおとなしく従った。

 しかし話はまだ終わらない。
しばらくたって、私はきちんと暗証番号が変わったかどうか確かめに行ったのである。
もちろん番号は変わっていた。
その時はじめて、なんだか急に自分が泥棒か何かになったように感じた。
そしてなんとなく後ろめたくなり、心から反省し、塀にももうのぼらなくなった。

 しかし話はまだまだ終わらない。
そのマンションに住む少し年下の女の子が、いつのまにか私の真似をして、塀にのぼるようになっていたのだ。
私はもう登るのをやめていたから、「危ないよ、やめなよ」なんて全く他人事のように注意してみたりしていた。
そしてあれは確か、冬の寒い夕方のことだった。
その日も、その女の子は「私、塀の上歩けるよ」と友達に自慢なんかして、塀の上を歩いてみせていた。私は横目でそれを見て、自分の家に入っていった。
が。しばらくして、外から悲鳴と鳴き声が聞こえてきた。
私は驚いて外へとびだしてみた。
すると、調子に乗ったのだろう。女の子が塀から落ちたらしく、地面に仰向けに倒れてじたばたして泣いていた。
頭を打ったのだろうか。血が出ていた。周りで友達がおろおろしていた。
その子のお母さんも出てきていて、そばで処置をしていた。
なんとなく責任を感じて私もバカなりに家にマキロンなど取りに走ってみたが、その場に戻ると、すぐに救急車がやって来て、 女の子は救急車で運ばれていった。

 数日後、大したことなかったのを知ってほっとしたのだが、
こんな悲劇(?)は、私が塀にさえ登らなければあり得なかったのであろう。
もうこんな悪いことは一生いたしません。許してください。ごめんなさい。
あの女の子が私のようなアホになっていないのを願うばかりである。